・描写するということ、観察するということ

制作をしようとするとき、誰もがイメージを持って製作に当たると思います。 表現するということは、その持っているイメージを画面に定着させるということです。 そして、漠然としたイメージとしての骨格に対して、具体性という肉付けをするためにかかすことのできないもの、それが描写です。
制作前に描写のイメージを持つか、イメージを形にするときに描写を行っていくかは、製作者のスタイルとして様々ですが、描写という言葉として意識しないまでも、作品が出来ているということは何らかの描写を行っているということです。CGにおいて描写力とはイコール、デッサンを描く力ということではないので絵を描くことに自信のない人も尻込みすることはありません。ただし、絵を描けるということは意識してかせずか、描写することを知っているということなので、一歩リードしているのは確かです。 私の考えでは(多くの人がそう考えていますが)、コンピュータの知識や経験が豊富な人にCGを作ってもらうよりも、絵を描く経験が豊富な人に一からCGを教えながら作ってもらう方が、質の高い映像を完成させるには遥かに近道です。
そして今回、自然表現するという意図は、何よりもまず描写力をつけるためのものです。 描写することに自信のない方は、ぜひともここから盗み取っていってください。そして、自分の表現に昇華するように、しっかり理解するようにしてください。

製作に入る前にもうひとつ、多分よく聞くことと思いますが、描写のためには実景を観察することがもっとも重要なこととなります。 そう、前述の描写力とは、CGにおいては観察するということ、空間に何が起こっているのか、目に入ってくる光の情報、物体の手触り、どのように運動しているのかを理解するということです。必ずしもすべての人がリアルなものを作ることを指向しているわけではありませんが、「抽象表現」と「現実の逸脱」ではその質において大きく異なります。現実を観察する目を持った上でデフォルメや抽象表現へと向かうことが必要です。
で、いったい何を観察すれば良いのか。 見るべきところはいくつかあります。

空間における光の有り方。
その中でもまずは光源、どこから光がきているのか理解しなければなりません。当然複数の場合もあり、また室内の場合でも自然光の存在を忘れてはいけません。そしてオブジェクトの反射する明かり、オブジェクトが見えるということはそのものが反射する光が目に入ってくるからです。 極端な話をすれば黒いものというのは見えていないから黒いのです。(わかりづらいかな?) でも、CGの世界においてはこの概念をそのまま具現化できます。拡散光は真黒、スペキュラも真黒、周囲光も黒、ほら、完全に見えなくなりました。透明という意味ではなく、そこにどんな光を当てようともまったく光を跳ね返してこない真黒な存在、ブラックホールといっしょです(吸い込みはしませんが)。 ちょっと話が逸れたので戻しましょう。ただ、オブジェクトの色で光が跳ね返ってくるということを言いたかっただけなのです。明るい部屋で白い壁に色のついた物を近づけるとすぐ分かります。光は拡散するので物と物とが接近したときほど、効率よく光の反射が起こります。ただし、物と物とが接すると別の現象も起こります。それは次の項目。

陰影 光の届かない所です。
どうして届かないのか?光源との間に何か遮蔽物があるからです。この場合遮蔽物とは裏表のある自分自身もさします。陰は自分自身の裏表により光の当たらない側のことで、影は他のオブジェクトが光を遮るために出来る暗い部分のことで、遮るオブジェクトの輪郭を投影します。当然どちらも光がなければ意味を成しません。なぜなら光がなければすべてが陰で、影はその存在を失うからです。これらを単なる概念と思わないでください。曇りの日に影が薄いのは、影が薄いんじゃなくて光が弱いのです。 そして、影もまた距離により拡散します(厳密には逆で、光が拡散するから影も拡散したように見えるだけですが。)。そう、距離です。物と物が接近すると影もまた強く発生するわけなのです。
お互いが光を反射し光を遮る。複雑な光のやり取りがここで行われているのです。 CGでは、ほうっておいたらこれらの現象は起こりません。こうした光のシミュレーションをするラジオシティという技法もありますが、速度の面から一般的ではありません。ではどうしたらこれらを再現できるのかというと、人それぞれ、様々な解決法を持っていると思いますが、舞台の照明と同じように補助光を当ててやることが一般的でしょう。ただ、その当て方は慎重に行うべきでしょう。色、強さ、角度、影響範囲、影付けの有無、など、条件によって様々な変化を遂げるため、このオブジェクト同士が接近し合うとこうなるということを、予測できるようになることが必要になります。それは普段の観察から養うしかありません。

例えば、壁を見てみましょう。上から下まで同じに見えますか? 天井はどうでしょうか?灯りとの関係は? 部屋の4角を見渡してみましょう。 さらに光とは別の所で、物と物の接している部分には時間とともに埃が溜まったり、変色していくことも考えられます。他にも、接していることによって削れるというのはどうですか? MAXにはDIRTYREYESというプラグインがありますが、安易に使用するのではなく、なぜ汚すのか考えてみるようにしましょう。 まだまだ観察すべきところは世界に溢れかえっていますが、どんどん長くなってしまうのでここらでまとめに入ります。
CGを中心に考えて大切なのは、

光と陰影(存在感。見せるということ、また、見せないということ)「ライティング」

質感(感触。そして、時間経過)「マテリアル」

物と物の接点に起きている様々な現象(接地感。存在の証明。) などなど。

これらの内いくつかは意識せずともCGソフトが勝手にやってくれるものもあります。しかし、知らないでソフト任せにするということはコントロールできないということになります。必要な所に光を当て、必要な所に影を落とすためには、これらの事象を理解しておく必要があり、そうすることにより高レベルでのリアリティを追求していくことの助けになるはずです。

長くなりましたが、読んでいただいてありがとうございます。


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